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子どもたちが音楽で外界とつながる瞬間を大切にしたい

2021.12.07 その他最新号

リズムや音が、心と体に与えるものは

乳幼児の心身の発達や子育て支援に関する研究を進めている立本千寿子(こども福祉学科)准教授は、臨床心理学と音楽学の専門家です。音楽を通じて子どもと養育者のサポートをしたいという立本准教授に、幼保・こども園や子育て支援などでの豊富な臨床経験に基づいた研究の魅力を聞きました。

「母体心拍音」についての研究に力を入れていると聞きましたが、どんな研究ですか?

世界中どこでも、心を落ちつかせる童謡やわらべうたなどは1分間に70から90拍の穏やかなテンポの曲が多いです。一方、女性の拍動も平均70から90拍で、国籍や人種による差はさほどありません。胎児にとって、母体の大動脈から聞こえる拍動音とリズムは初めての音体験なので、心拍が刻むリズムは安心や癒しを乳幼児に与えるのではと仮説を持ちました。
調査では、幼児に無音、母体心拍音、オルゴール音を聴いてもらい心拍数を測定しました。その結果、母体心拍音を聴かせると、幼児の心拍数が減少することが示唆されました。このことから、母体心拍音の音・リズムは、幼児にとって肯定的な影響がある音源であると考えています。

海外との共同研究を進めているそうですね。

フィンランドは特別支援教育に力を入れている国で、発達に障害のある子どもへのサポートに関しても先進的です。今後、フィンランドの特別支援教育のスタッフと共同で、母体心拍音の発達に課題を持つ子どもへの有効性について研究を進めていく予定です。

音と心にかかわる研究を始めたきっかけは?

教育系の大学でピアノを専攻していた時期は、ピアノは、よい音色で正確に表現豊かに弾くことに注力していました。しかしある日、特別支援学校での実習でひとりの自閉スペクトラム症の子どもと会いました。授業を行った後、休み時間にその子が無表情で私の手を引っ張って、グランドピアノの前に座らせたので、私は「弾いてほしいのかな」と思い、弾き始めました。するとその子はピアノの下に潜り込み、実にうれしそうに音に聴き入ったのです。音楽の力を感じて純粋に感動しました。それから、音楽を使って子どもたちが安全に過ごせる基地が作れないか、と考えるようになり、大学院に進学して臨床心理学、音楽療法を学びました。そのころから大学の附属相談室でプレイセラピーを行ったり、分離不安をもつ保育園児に音楽療法を実施したりするなど、臨床活動も始めました。
 臨床の場で気をつけていることは、ひとまず対象者の全てを受け入れること。自分の物差しは一度捨てて、相手の話を聞く。その後で、必要ならば専門家としての物差しを活用し、コミュニケーションを進めます。

兵庫大では音楽療育などの科目を担当されていますね。

演習では、実際の現場で音楽を使った子どもの支援ができるように、楽器づくりや、フラフープを使った体の動かし方なども学んでもらいます。学生からは「先生、いつも楽しそう」「先生から元気をもらった」などと言われますが、私の方こそ学生と接することでパワーがもらえると思っています。人生の大切な時期を生きている学生たちの、未来を描き実現させていく過程を見守れることは幸せなことだと思っています。

  • 講師紹介
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生涯福祉学部こども福祉学科 准教授
【専門】音楽学、臨床心理学

立本 千寿子

【研究テーマ】乳幼児の心身と音・リズムに関する心理学的研究/療育と子育て支援

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