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理論と臨床の両面から依存症者と支援者の支援に取り組む

2021.12.07 vol.13教育

支援をする人と受ける人、両者の充実した生活をめざして

朝比奈寛正講師(社会福祉学科)は、大学時代の実習で薬物依存症の人々と出会い、卒業後は精神科病院の精神保健福祉士として、さまざまな依存症者の支援に関わってきました。その経験から、もっと効果的な支援を追究したいという思いが膨らみ、臨床の仕事を続けながら大学院に進学。現在は現場が分かる研究者として、ソーシャルワーカーをはじめとする支援の専門家から厚い信頼を得ています。

大学院での研究で、何を得たと思いますか。

KJ法との出会いは研究に大きな影響を与えた

当時の私は「ワーカーは依存症の人に対してどう支援するか」という課題をめぐって、既存の概念を超える方法論がないかと模索していました。修士時代にはワーカーへのインタビューを数多く行ない、質的な側面から研究を進めていましたが、なかなか納得がいく解決法が出せませんでした。そもそも病院での仕事を抱えながらの研究活動だったので、正直に言うと本当に大変でした。
そんな中、博士課程に進んだころに出会ったのが、研究者の主観を活用して情報をまとめ図解化、叙述化する「KJ法」という分析方法です。この出会いによって自分の感覚を言葉にして、人に伝えることができるようになり、質的研究を深めることができました。

研究活動とともに、専門職の養成にも力を注いでいますね。

対人援助の専門職であるソーシャルワーカーの養成は重要な使命です。現場を知る者でなければ、専門職を育てるのは難しいと思います。学生にはつねに、「自分はどう考えるか」を繰り返し言語化するよう働きかけています。それが現場での対応力、コミュニケーション力を伸ばすのです。時折「朝比奈先生は正解・不正解を教えてくれない」と言われますが、精神科の領域にはやってはいけない対応、考え方はあっても、こうすれば間違いなく正解というものはありません。そのことを理解してほしいと思います。
学生がよく戸惑いを感じるのは、精神科病院における実習です。彼らが今まで見聞してきた世界と違っているからです。例えば福祉系の高校で高齢者ケアを学んできた学生は、メンタルヘルスの場では高校時代に学んだ知識や経験が通用しない場合があることに気づき、悩みます。彼らは本当に苦しむのですが、実はとてもいい経験をしています。そんな学生には「君は今、真に成長しているんだよ」と言っています。

今後の取り組みについて聴かせてください。

研究については、これまでアルコール依存者に対する支援を主テーマとして進めてきましたが、今後は、アルコールに加え、薬物やインターネット依存症者への支援にも領域を広げていきたいですね。
実践活動では、以前から福祉の職能団体に関わり、専門職の研修会、講習会などの講師を務めるほか、会員すなわち専門職に対するサポートなどを行なっています。対人支援の質の向上のため、これらの活動には引き続き注力していきます。

最後に、現場で奮闘する支援者と、これから社会に出る学生に一言。

24時間365日、支援者であり続けなくてもいい。勤務時間外には一般住民としての楽しみを味わって過ごしてください。長く福祉の世界で活躍し続けることを願っています。

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生涯福祉学部社会福祉学科 講師
【専門】メンタルヘルス、アディクション

朝比奈 寛正

【研究テーマ】アルコール関連問題に対するソーシャルワーク/精神障害者の地域移行支援/救急病院と精神科病院の連携など

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