【科学研究費 採択研究テーマ】高齢者のよりよい暮らしの実現へ向けた基礎研究
2021.12.07 vol.13教育
独居高齢者の在宅生活継続における意思決定支援についての基礎的研究
科研費(科学研究費助成事業)とは、文科省および独立行政法人日本学術振興会が、学術研究の発展を目的に独創的・先駆的な国内の研究者・研究グループへ、審査を経て交付される助成金です。本学の石井久仁子講師(看護学部看護学科)は、高齢者看護学および地域看護学関連の基礎研究において、2019年度から3か年にわたり助成金が交付されました。
1.研究の背景について
独居高齢者が在宅生活を継続するうえでの課題
高齢化が進む中、高齢者の単身世帯も増加しています。家族と同居、または、家族が身近にいる人と比べ、独居や身寄りのない高齢者は日常の細やかな見守りやケアが得られにくく、要介護状態になると在宅生活を続けることが難しくなったり、急病時の搬送や死亡後の発見の遅れなどの問題が生じることがあります。また、認知症の発見の遅れなどによって、相談支援機関に繋がったときにはすでに本人の意思確認ができない場合もあります。高齢者ご自身が「自分の暮らし方は今後どうなるのか」という不安を抱える一方で、地域包括支援センターのスタッフやケアマネジャーなどの援助者(以下、援助者と表記します)も課題を抱えています。現在、国は、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができることを目指し、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進しています。住み慣れた自宅で生活を続けたいというのが多くの人の願いですが、そのためには高齢者自身の意思決定と自助、互助機能が重要になります。
2.研究をどう進めるか
高齢者本人の意見と専門職の支援経験を集め、課題抽出
今回の研究は、独居高齢者の在宅生活における意思決定支援の実態と課題を明らかにして、今後の備えのための支援を検討することを目指しています。高齢者自身がどのように在宅生活を継続し、最期をどこで迎えたいか意思決定ができるように、援助者と話し合いながら備えを進められる具体的で使いやすい指標を作りたいと考えています。そのために、まず高齢者が在宅生活を中断するにいたった状況、高齢者自身の備え、 援助者の支援内容などについて援助者から意見を集約します。さらに独居高齢者に現在の生活状況と今後の意向、そのための備えの有無について間き取りをします。これらのデータを元に分析を進め、在宅生活を継続の意思決定を支援するために必要な項目をリスト化します。結果については学会などを通じて情報を提供し、現場で働く多くの専門家のみなさんにリストを活用していただきたいと考えています。研究活動を通じ、一人ひとりが希望に沿った生き方を実現し、「万が一」にも備えることができるような環境づくりをしていきたいと思います。
3.研究と教育
研究を学生へフィードバック
この研究はまだスタートしたばかりです。コロナ禍の影響でなかなか作業が進まないのも実情ですが、将来的には学生にも研究の内容を紹介していきたいと思います。看護や福祉をはじめ、対人援助職の道を目指す学生たちにとって、現場で起きている課題について探求し、自分にできることを考えていくきっかけに繋がればと考えています。また、本学は栄養・運動・保育に関する学科もありますので、学科間の連携協働を進めることで、独居高齢者の支援や介護予防、世代間交流などの地域貢献ができるのではないかと考えています。
- 講師紹介
- 高齢化
- 単身世帯
- 老後
看護学部看護学科 講師
【専門】公衆衛生看護学
石井 久仁子
【研究テーマ】地域包括ケアシステム/他職種連携におけるケアマネジャーの役割/独居高齢者の在宅生活支援の継続支援/認知高齢者のケアマネジメント/遠隔看護の活用など