子どもの身体活動を計測し、体を動かすことの意義を客観的に証明する
2021.12.06 vol.13教育
次の時代の健康を育むために
幼稚園で「保健室の先生」として子どもたちを見つめ続けてきた経験を生かし、幼児期の心と体の健康を研究する米野吉則講師(健康システム学科)。「幼い子どもにとって、遊びは生きていくのに必要なことの多くを学ぶ場である」という立場から、子どもが「体を動かすと気持ちがいい」という感覚をしっかり持てるようにすることが大事だと語ります。
保育園や幼稚園で子どもの身体活動を計測していると聞きました。
私は、子どもの頃の身体活動が成人期の心と体の健康にどう影響するか、また保育者や家族が子どもの幼児期の身体活動をどう支えていくべきかをテーマに、行政に対する政策提言まで視野に入れて研究を進めています。
4~6歳の子どもたちを対象に、本学の附属幼稚園をはじめ、熊本、福岡、埼玉県の保育園や幼稚園で、運動やダンスなど体を使った活動を計測し、行動の効果を評価しています。子どもたちを社会的に支えるためには、行政とともに幅広い活動を進めなくてはならず、そのためには確固としたエビデンスが必要ですので、各園の先生方と連携して、データの蓄積を進めています。
幼児を対象にした研究は数値化しにくく、研究方法を模索していた時期もあります。そんな中で、身体活動の強度や時間を簡単に計測できる活動量計という計測機器に着目しました。これはとても小型で、現場の先生のご苦労も少なく、機器を装着する子どもたちもあまり負担を感じずにすむものです。
共同研究を続けている幼稚園の先生からは、積極的に感想をいただきます。現場の専門家の実感から出たアイディアに、研究のヒントがあるのではと思うからです。この仕事は、園長をはじめ先生方のご理解とご協力がなければ成立しません。そういう研究に取り組めていることに感謝しています。
研究に取り組もうと思い始めたきっかけを教えてください。
幼稚園で養護教諭として勤務していた頃、健康指導や運動指導をしながら、子どもたちの身体活動量と睡眠時間の少なさを痛切に感じていました。やがて「この問題は、一人ひとりの先生が現場で頑張るだけでは、なかなか改善されないのではないか」と考えるようになり、子どもの健康の専門家として研究を始めようと決心しました。
地域の人々の健康増進に向けた社会活動について聞かせてください。
学生たちと一緒に、2018年から加古川市、播磨町、稲美町、高砂市の2市2町において高齢者の「ロコモティブシンドローム予防講座」を行うほか、各地で子どもと高齢者のための運動と健康をテーマに、講演、教室、ワークショップを実施しています。学問的知見は現場に還元することが大事ですから、今後も研究と実践活動のバランスをとりながら進んでいきたいと考えています。
学生の指導で意識していることは。
学生には、教えすぎないように努力しています。彼ら自身が学ぼうという意欲をもつことが、最も大切だからです。課題に取り組む時には、これまで生きてきた力をフルに生かして考え、自分なりの答えを生み出してほしいですね。現場に行けば、解決できないことや分からないことがたくさん出てくるでしょうが、つねに問題意識をもって歩み続けてほしいと思います。
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健康科学部健康システム学科 講師
【専門】発育発達学、身体教育学、子ども学
米野 吉則
【研究テーマ】幼児から学童期における身体活動量の向上を目指した介入研究/学校教育における援助希求の支援に関する研究など