地域の方々の健康を複眼的に追究する
だれもが気軽に楽しく参加できる健康増進活動とは
2023.07.25 栄養・健康
加西市では、地域住民に健康習慣を身につけてもらうための動機づけにしようと、健康ポイント事業を平成28年度から継続しています。この事業で収集した多様なデータから健康増進効果を解析してほしいという依頼を受けたのが、本学の朽木勤教授。学内の異なる分野の2人の教員と共同研究を行って、健康ポイントの付与が住民の健康増進につながっているのかを検証しました。
加西市の運動ポイント事業とは?
この事業は、住民が「歩く、スポーツ活動に加わる」など、健康の維持・増進につながる活動に参加した場合、ポイントが付与され、そのポイントが地域の商業施設などで利用可能なものになるというものです。運動ポイント事業は全国で盛んに行われ、加西市でも参加者の長期にわたる体力測定、健康診断などのデータが多く蓄積されています。
事業の効果検証を依頼されたきっかけ
実は、この事業の担当者は本学の卒業生で、加西市において、健康運動指導士として活躍しています。私はその方から「ポイント付与の健康増進効果について、専門的な立場で解析して、事業の結果を取りまとめてほしい」との依頼を受けました。そこで、さまざまな視点からデータを解析するために、私以外に2人の本学の先生に参加していただき、ポイント事業の分析を進めることになりました。
研究の進め方と結果について
共同研究にあたり、3人共通の目標は「果たしてポイント事業は健康づくりに役立っているか」を調べることでした。公衆衛生学が専門の多田章夫先生には生活習慣病と運動の関連性について、また発育発達学が専門の米野吉則先生には、ポイント付与が健康増進活動に与える効果について分析していただきました。一方、私は地域性という視点から健康増進事業の効果を検証。同じインセンティブに対して、どの地区の人々が積極的に取り組むのか、その要因は何かなどを追究しました。
分析の結果からは、ポイント事業が市民の運動意欲を促進させ、効果的な運動習慣を創出したこと、1日10,000歩を月に20日は月に300ポイントに相当し、年に3,500ポイントで、健康効果がみられることが示されました。同時に、地域による参加者数の違い、測定された歩数の違い、体重減少割合の違いなどが明らかになりました。
今後の挑戦について
現在は、令和元年から3年度までのデータを解析し終えたところです。スマホを活用した新しい方法に切り替わって参加者も2倍以上になりました。これからも継続的に解析をしていく予定です。ポイントは、地域通貨として利用できます。今後は、その使い道をさらに広げて、地域の環境保全やこどもたちへの支援など「あなたが健康になれば町もよくなる」という仕組みはできないかと、加西市の担当の皆さんと話し合いながら考えています。また、令和4年度、加西市で新しいスポーツ事業が実施されました。主な対象は、ポイント事業でフォローできなかった子育て世代の女性たち。アスリートの協力を得てトレーニング動画を作成し、それを見ながら運動してもらって、私たちは監修という立場で効果を検証しています。その結果、行動変容ステージがアップしたことが示されました。どんな仕組みであれば人々が自然に身体を動かすようになるのか、そのために必要な仕掛け作りにこれからも挑戦していきたいです。
- 講師紹介
- 地域
- 健康
朽木 勤
健康科学部 健康システム学科 教授 専門:健康体力科学、運動処方