小麦に負けないうまさの麺を「米」から創りたい
もっちりした米粉パスタ、うどんの開発に向けた取り組み
2024.06.14 最新号栄養・健康
永井助手の出身地は、米どころとして知られる新潟県。早くから米に興味を持ち、兵庫大学においても、パスタやうどんなどへの米粉の活用法を研究中。米粉からおいしいパスタが作れないかというテーマに日々挑戦しています。
研究の内容を教えてください。
現在は、米粉を使った新しい麺類の開発に取り組んでいます。手軽に食べられる新しい食品をめざすための、基礎的な部分の研究が私の仕事です。
小麦粉と違って、米粉にはグルテンのような粘り気、弾力をもつ成分が含まれていません。そのため、米粉単独ではもっちりとした食感のあるパスタやうどんなどの生地を作ることは困難です。
そこで私が着目したのが、大豆タンパク質。米粉に加えることで生地に弾力をもたせて食感を改善するとともに、栄養面からもすぐれた食品が生まれるのではと考えました。数年前から取り組むようになったのが、粉末状にした大豆タンパク質と米粉を使い、新たな食品ができないかという研究です。
実験では、米粉に水と大豆タンパク質を混合した生地を、配合比率を変えながらさまざまに調製し、できあがった麺を茹でて食感の違いを比べます。小麦粉のパスタと食感がどう異なるかを知るため、自分で生パスタを作って食べ比べたり、機器を用いてどのくらいの硬さで噛み切れるかなど、さまざまな視点から計測しています。時には試食してもらい、被験者から評価や感想を集めることも行います。
実験の結果、大豆タンパク質の割合が一定以上多くなることで、米粉の糊化が抑制され、食感が変化することがわかってきました。
小麦製品にも引けを取らない食材を生み出す可能性は?
米粉を使ったパスタやうどんは、以前に比べると市民権を得てきたかなという感触はあります。コストがかかることが難点ですが、味はずいぶん小麦由来のものに近づいていると思います。グルテンを含まない米粉は、アレルギー対応にも活用しやすい食品。今後、食感がさらに向上してくれば、需要も増えてくるのではないかと予想しています。栄養価も考えて、安全で食べやすい食品を開発し、いずれ現場とつながっていければうれしいですね。
授業の中での学生との関わりは?
現在、栄養マネジメント学科の学生たちの実験実習をサポートする助手を務めています。失敗したくないという理由で実験に消極的な学生もいますが、自分自身の経験では、実験は失敗から得られることもたくさんあります。なんでもやってみないと成果は出てこないので、好奇心を持ってチャレンジしてほしいですね。
また、学生たちによる地元食材を用いたレトルトカレーの開発・販売にも携わっています。「加古川和牛の牛すじカレー」は、「阪神地区9大学対抗宝塚カレーグランプリ2023」で売り上げ第2位に輝きました。
研究していて楽しい時は?
期待通りのデータが取れ、学会発表というハードルを乗り越えた時ですね。とはいえ、地道なデータを積み重ねて思うようなデータが取れた時は、うれしいよりもまずホッとします。逆にうまくいかない時は、気分転換においしいものを作って食べています。得意料理はもちろんパスタやローストビーフ。管理栄養士の資格も持っていて、料理は作るのも食べるのも大好きです。
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永井 紘太
健康科学部 栄養マネジメント学科 助手 専門:調理科学