子どもに楽しい理科教育を!胸おどる実験を!
科学的に思考する力の育成をめざして
2024.06.14 教育最新号
「問いを見つけ、仮説を立て、それを確かめるための実験を計画し、結果を予想する。さらに実験結果から考察し、結論を出す。これら科学実験の流れを生活のさまざまな場面で応用できるよう、しっかりと体得してほしい」。安部洋一郎准教授の研究は、小学校理科教科書の分析と現場での実践活動との融合から進められています。
研究を始めたきっかけは?
「小学校学習指導要領 理科」には、問題解決のための実験について、その内容は子ども自身が考えるべきであると明記されています。研究者も行政も同様の考えを持っています。しかし私には、実験を子どもに任せきりにしてしまっていいのか、また、教員はどのようにして計画立案の指導を行うのかなどの疑問が浮かびました。これが現在の研究のきっかけです。
どのように研究を深めていった?
教員時代はいろいろ文献を探し、そこで見つけた指導法で子どもたちに実験してもらいました。クラスごとに異なる指導法で教え、その違いを観察したり、子どもたちに実験を計画させ、話し合いの過程を分析したこともあります。
そのうちに実験計画能力とはそもそもどんな能力か、そのうち子どもに身に付けさせるべきなのは、その中のどの部分なのかというところに関心を持つようになり、教科書分析に進んでいきました。
実験計画の能力には、子どもが自分で身につけるべき部分と
そうでない部分がある?
例えば小学6年生では、「日光が当たると葉っぱに澱粉ができるのか」を確かめる実験を行うことになっています。これは小学校で多分最もむずかしい実験です。日光が当たっている葉と当たっていない葉を比較するだけでは、実験を始める前から澱粉があったかどうかが分からないからです。そこで、前日の夕方からアルミホイルをかけておいて、朝の時点で澱粉がないことを確認する手順が必要になります。
子どもたちは当日の実験は理解できるが、前日から準備して初めの状況を調べておくことを彼らに理解させるのは難しいことです。
私は、子どもに全部計画させるのではなく、計画させるべきところと教えるべきところがあることを意識すべきだと思っています。どの部分は考えさせ、身に付けさせるのか、どこを教えておくべきか。その切り分けをていねいに見ていくことが大事だと思います。
子どもが自分で実験を計画する意義は?
それによって科学的な考え方を養うことができることです。「3回測って平均を取ろう。教科書にそう書いてあるからね」と教えるのではなく、子どもに自分で計画させながら「やっぱり何回も測った方がいいのだ」という言葉を彼ら自身から引き出さねばなりません。自分で納得することが大事なのです。そうして身につけた力は、理科の範囲にとどまらず、必ず生きていく力になります。
よき理科教師になろうとする学生にメッセージを。
理科は、とても面白い教科です。私が教師志望の大学生に求めることは、まず本人が理科を大好きになってほしいということです。そしてその思いを持ち続けながら、子どもたちに「学びたい瞬間
を提供できる教員になってほしいと願っています。
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安部 洋一郎
教育学部 教育学科 准教授 専門:理科教育