大正から昭和、平成、そして令和
「和」の精神とともに歩んだ100年
2022.07.28 vol.14その他
地域に支えられ、時代の変化に対応しながら、つねに挑戦を続ける睦学園。大正時代に小さな塾として開設して以来、どのような時も学園を担う人々が心の拠り所としたのは「和」の精神と仏教の教えでした。現在までに大学、短期大学部、高等学校、中高一貫校と2つの幼稚園が設立され、各校園はそれぞれの教育目的に沿って充実した教育活動を行っています。
目次
- 創設・創立
- 学園訓と「和」の精神
- 学校紹介
- 100周年に向けて
- 学園沿革
- スローガン・ロゴマーク
創設・創立
(左)校祖・鶴崎規矩子刀自/(右)校主 河野厳想・校母 センヨ夫妻
睦学園の源は大正時代、鶴崎規矩子と河野厳想・センヨ夫妻にボランティア有志が加わって運営された太子日曜学校に由来します。この学校には須磨一円から300人もの子どもたちが集まりました。授業は毎日曜日、まず全員が講堂に集まり、聖徳太子尊像に向かって礼拝。鶴崎規矩子は毎回出席しました。彼女が重視していたのは「和らぎの心」であり、河野厳想によると、活動の目標は「面白い童話、楽しい唱歌、遊び等を通じて、和らぎの心や敬いの心が育つように努める」ことでした。
1923(大正12)年には独立校舎「太子館」が誕生しました。太子館は、創設時から男女、宗派も問わない多様な活動の場として用いられ、高名な僧侶や仏教学者などを招いての宗教講話の会や講演、集会などを行うための施設として機能しました。さらに昭和期になると、「報恩行」という福祉事業も行いました。これは節約して得た餅米で年末には餅つきを行い、貧しい家庭や人々に餅を配るという活動でした。
子ども対象の日曜学校だけでなく、実践教育を行う技芸女学校の運営、さらに地元の人々のための公開講座や福祉活動を展開するなど、本学園は最初期から仏教の精神を大切にしながら地域と共に歩んできました。
学園訓と「和」の精神
生徒たちの修養会
睦学園の建学の精神は、聖徳太子が十七条憲法の第一条「以和為貴(和を以て貴しと為す)」で示された「和」です。聖徳太子は「和」の実現のため、仏教の大切さを説いておられます。本学園には開設時から建学の精神の基本に仏教がありました。本学園の精神を具体的に表すことばとしては、学園訓である「感謝」「寛容」「互譲」が掲げられています。生かされていることへの「感謝」、あらゆるいのちを優しく受け入れ大切にして共に生きていく「寛容」、そして互いを思い合いながら助け合っていく「互譲」です。これらが学園の具体的な行動規範となっています。聖徳太子は自身を深く見つめられた方でもあり、十七条憲法の第十条にも「我必ずしも聖にあらず、彼必ずしも愚にあらず、共にこれ凡夫のみ」とあります。こうした自身への深い洞察は、鎌倉時代の親鸞聖人にも通じるものがあるでしょう。本学園は聖徳太子を大切にされた親鸞聖人を開祖とする浄土真宗本願寺派の宗門関係学校でもあります。親鸞聖人は聖徳太子を深く敬慕され、凡夫という概念を厳しく自分自身の問題として考えた僧でもあります。本学園の礎を築いた鶴崎氏、河野夫妻は、親鸞聖人の開かれた浄土真宗の教えに大変ご縁の深い方々でもありました。これらのご縁をいただいた本学園は、浄土真宗本願寺派関係学校が集う龍谷総合学園に加盟し、ともに建学の精神の具現化に向かって努力しています。
学校紹介
睦学園は、兵庫大学ならびに短期大学部をはじめ、中学、高等学校ならびに幼稚園を有し、それぞれにおいて特徴ある学びを展開しています。
兵庫大学
地域の中で学びを深め、ビジネス、医療、保健、福祉、教育の現場で活躍する人間力、応用力を備えた高度な専門職者の育成に取り組んでいます。
兵庫大学短期大学部
豊富な実習と実践的授業で、2年間または3年間で専門的技術、知識の修得を進め、即戦力として活躍できる保育者を育てています。
兵庫大学附属加古川幼稚園
恵まれた自然環境の中、多様な経験を通じて、健康な体と豊かな情操・感性を育んでいます。兵庫大学と連携し、幼児教育の研究にも取り組んでいます。
兵庫大学附属須磨ノ浦高等学校
保育・福祉・看護を中心に、製菓・調理系(選択制)を加え、社会に貢献できる人材の育成に努めています。兵庫大学、兵庫大学短期大学部との一環教育システムも整えています。
神戸国際中学校・高等学校
学力・語学力・人間力を育み、グローバルに活躍できる女性の育成に努めています。一人一人を大切にしたきめ細やかな指導を行っています。
兵庫大学附属須磨幼稚園
英語に特化したクラスを設置し、ネイティブの先生との会話を楽しんでいます。ファミリーガーデン(第2園舎)では遊びを通じ、しなやかな心と体づくりに取り組んでいます。
100周年に向けて
2023年、睦学園は創立100周年を迎えます。
創立以来、建学の精神「和」を礎として、互いを認め、助け合い、感謝の心を大切に、誰もが尊重される地域と社会の実現を追求してきました。これまでの伝統を大切にしながら、次の100年に向け更なる発展を遂げるため、現在、学園の中長期計画「睦学園グランドデザイン2030」の策定を進めています。
「和でつながり、個を伸ばす。」をビジョンとし、幼稚園から中学校、高等学校、大学まで、各教育機関の特色を引き出しながら、互いの連携を図り、それぞれが発達段階に応じた魅力ある教育を展開できるよう、私たちは誠心誠意努力を続けています。
いかなる時代にあっても揺らぐことのない、真に必要とされる学びの場として、睦学園はこれからも教育の質を重視しながら、よりいっそう地域に愛される学園をめざして、更なる飛躍を遂げてまいります。
学園沿革 いくつもの困難をバネに学園はずっと成長し続けている
(左上)学園復興の意欲に燃えた時代のバザー
(左下)復興の願いを込めて生徒たちが須磨海岸から運んだ石。復興への願いが毛筆で描かれている
100年の時代とともに歩み続けてきた睦学園。その校舎は過去2回、甚大な被害を被りました。第二次世界大戦末期、空襲により施設のほとんどが灰燼に帰したのは1945年。1995年には阪神・淡路大震災によって大きく被災しました。しかし学園は再び不屈の精神で立ち上がり、復興を成し遂げました。奇しくも震災の年、長年の夢だった地域初の4年制大学として、兵庫大学が誕生。そして令和5(2023)年、教育学部がスタートします。
1921年(大正10年)
学園の創始
聖徳太子薨去1300年祭を記念して、「仏教の日曜学校」を始める聖徳太子の「和」の精神を大切にした情操教育を目的とし、須磨寺近くに設立された
1923年(大正12年)
学園の創立
「 太子館」を設立。太子館附属高等裁縫部(須磨睦高等技芸塾)併設全国唯一の独立校舎を持つ日曜学校となる。と同時に須磨区内最初の建物と言われ、大いに注目を集めた
1926年(大正15年)
須磨幼稚園設置
早くから幼児教育にも力を入れ、太子館附属として認可がおりた
1929年(昭和4年)
須磨睦高等技芸塾を改め、須磨睦技芸女学校設置
さらなる発展を遂げるべく、本科・専攻科・研究科を併設した女学校となった
(左)昭和17(1942)年頃の校舎/(右)兵庫女子短期大学学舎
1948年(昭和23年)
須磨ノ浦高等女学校を須磨ノ浦女子高等学校に改称、設置
終戦後に復興の道を踏み出しはじめ、この年に鉄筋2階建校舎が復旧した
1951年(昭和26年)
学制改革により法人名を学校法人睦学園に改称、設置、認可
「 和」の精神に由来する「睦」を学園の名称とした
1955年(昭和30年)
睦学園女子短期大学設置
夜間教育の「保育科第二部」の申請を文部省に提出、4月に開学
1966年(昭和41年)
短大名を兵庫女子短期大学に改称、神戸市須磨区から加古川市に移転
校地購入後急ピッチで造成・建築が進められていた加古川学舎が完成し、4月に移転した
1967年(昭和42年)
短兵庫女子短期大学附属加古川幼稚園設置
幼児期の望ましい成長発達を助長する教育機関として創設された
1991年(平成3年)
須磨ノ浦中学校を再開、校名を神戸国際中学校に改称、設置
昭和48年に休校となっていた
1994年(平成6年)
神戸国際高等学校設置
終戦後に復興の道を踏み出しはじめ、この年に鉄筋2階建校舎が復旧した
平成7(1995)年の入学試験
1995年(平成7年)
兵庫大学設置(経済情報学部経済情報学科)
「新しい教育」をコンセプトに一期生239名でスタートした
1999年(平成11年)
兵庫大学 大学院経済情報研究科設置(経済情報専攻)
大学院開学記念式典も行われた
2001年(平成13年)
兵庫大学 健康学部栄養マネジメント学科、健康システム学科開設
21世紀に入り新時代に即した教育を促進
2008年(平成20年)
兵庫大学 生涯福祉学部社会福祉学科開設
少子高齢社会に対応。研究科三学部体制となった
2013年(平成25年)
兵庫大学 生涯福祉学部こども福祉学科開設
「子どもの最善の利益」を原則とする子ども観を持った人材育成に注力
2016年(平成28年)
兵庫大学 現代ビジネス学部現代ビジネス学科開設
グローバルな視点と地域のつながりの両者を重視した学びを展開する
2017年(平成28年)
兵庫大学 看護学部看護学科開設
病院を再現した学内施設で学びながら実践力を鍛え、高い技術を持つ看護師を養成
2020年(令和2年)
兵庫大学 大学院に現代ビジネス研究科及び看護学研究科開設
本格的な長期留学生受け入れがスタート、ともに学び成長する仲間が増えた
QOL及びQOPDの向上に資する高度な看護専門職育成の場が誕生した
2023年(令和5年)
学園創立100 周年、兵庫大学に教育学部教育学科設置(予定)
「教育者を養成する力」を発揮し、さらなる発展を目指す
スローガン・ロゴマーク
和の力で、環を創る。
睦学園は、2023年に創立100周年を迎えます。本学園は、建学の精神である「和」を育む有為の人材を養成し、地域に根ざした教育機関として邁進してきました。次の100年に向け、「和」の精神を礎として全体が志をひとつにし、未来を見据えた共創の「環」へ。学生・生徒・園児への教育支援のさらなる充実と地域社会の永続的発展に貢献します。
シンボルマークに込めた意味
「1」は人を、「0」は和を表し、「和」を育む人を養成する睦学園の建学の精神を表現。その「和」がつながって無限大の「環」となり、その環を大きく広げながら未来へ上昇していく本学園の願いを込めています。ロゴカラーは、次の100年も私たちが大切にしたい人々の温もりや活気をイメージしています。
- 最新号
- その他
- 周年記念
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