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学生にとってよりよい大学をめざし次の取り組みへと前進 新たな教育へと続くたゆむことなき兵庫大学の改革

2024.06.14 教育最新号

学生が成長を実感できる教育を

FD(Faculty Development)・SD(Staff Development)活動は、学生目線に立った多様な改革を進めながら教育の質改善、向上をめざす教員・職員による組織的な取り組みです。本学では、学生が満足できる学生生活を送り、輝ける未来へ巣立っていくことを目標に、長年にわたってさまざまなFD・SD活動を続けています。
現在では全学教職員をあげて「学びの見える化」に取り組み、学生が社会での活躍を意識しつつ学ぶべき方向を見極め、自分の成長を実感し、充実した日々を送れるような、よりよい教育環境の創造をめざしています。

活動のはじまりは授業評価アンケートから

吉原惠子FD・SDオフィス副室長(社会福祉学科教授)によると、本学におけるFD・SD活動が始まったのは15年ほど前。最初に着手したのは、学生による授業評価アンケートの実施でした。 この活動に吉原副室長は携わっていませんが、「導入時はとても苦労したときいています」と振り返ります。「本学への着任以来、FD・SD活動に関わってきましたが、これまでの活動の歩みは、つねに手探りの状態で進んできたと感じています」(吉原副室長)。 当初からの課題は、教員が一方的に講義する授業スタイルから、学生が自ら能動的に考え、学ぶアクティブ・ラーニングへの転換をどう行うかでした。どのような授業を行えばよいかをテーマに、希望する教員が集まってワークショップを開催。同時に理論的な学びも深めようと、研修会を定期的に行い、学外から専門家を招いて講演を実施しました。「教育をよくしようという意欲は、どの先生もお持ちでしたが、多忙な方が多く、実際にはなかなか実践に移すことができなかったというのが本当のところでした」。
FD・SD活動が定着しなかった当時の状況を振り返ってみると、教員の理解が得にくかったという実情が伺えます。「授業アンケートに対しては『なぜ行うのか』という疑問が上がりました。また、授業公開では、教員が互いの授業を参観し合い、他の授業のよいところを吸収して行こうという試みを始めました。これに対しても『学生の邪魔になるから』『やはり公開したくない』というような消極的な意見が少なくありませんでした」。

短期大学の改称と加古川キャンパス

コロナ禍も止まることがなかった変革への機運

そうした一進一退の時期を経て、取り組みに動きが見られたのは2019年ごろからです。
「コロナ禍が始まる少し前に、FD・SDオフィスが本格的に始動し、活動が定着してきたように思います。今ではアンケートも軌道に乗り、研修には、大多数の教員が参加するようになりました」。
コロナ禍に突入すると、FD・SD活動はそれまでとは形を変えることになりましたが、決して下火にはなりませんでした。その一例が「研究会で聞いた話をもとに、意見交換を」「FD・SDは教職員どうしのコミュニケーションを増やすことから」という声からスタートした教職員カフェです。「対面での活動ができなくなってオンラインでの開催となりましたが、気軽に話し合える『カフェ』の雰囲気を引き継ぎ、各自がマグカップを持って各自のモニター前から参加しました。」「現在、私たちは、学びの成果をわかりやすく指標に表そうというテーマを掲げています。これを『学びの見える化』と名付けて取り組んでいます」。

「兵大 Basics ABC」と「兵大プロフェッショナル力」

「兵大 Basics ABC」と「兵大プロフェッショナル力」

「学びの見える化」を実現するために、兵庫大学では、学生に身につけてほしい力を「兵大Basics ABC」「兵大プロフェッショナル力」という2つのカテゴリーに分類し、提示しました。学生のさまざまな能力を入学時から定期的に集約し、「兵大Basics ABC」「兵大プロフェッショナル力」の伸びで示します。
「兵大Basics ABC」のAは、学びの基礎力である日本語、コンピュータ演習、英語の運用力、Bは専門的学修の基礎力、つまり2~3年次の専門教育の土台となる力です。Cは、4年間を通じた学業をはじめ、課外活動、ボランティア活動などから培われるコミュニケーション力、チームワーク、リーダーシップ、情報分析力、問題対処力など、社会で活躍するために必要とされる汎用的能力です。
一方「兵大プロフェッショナル力」は、学科の学びのなかで身につけることをめざす専門的能力です。スペシャリストに必要な能力をわかりやすく分類し、段階的に身につけていけるよう設定されています。
この2つの指標による評価を、そのつど教員と共有することで、学生は次の適切な目標を立て、効果的な学修が可能となり、卒業時には自分がどう学んできたかを把握することができます。

FD・SD活動のこれから

兵庫大学のFD・SD活動は、今後どうなっていくのか。また、どうなっていくべきか。吉原副室長の考えを聞きました。
「初期のFD・SD活動は、専門家による研修、すなわち啓蒙型が中心でしたが、そこに、教職員が意見交換して気づきを得る対話・交流型のカフェが加わりました。また、授業公開では相互研鑽の機会となっています。今後は、自ら課題を発見し、協働して解決する教職員主導型のFD・SD、改善を改革につなげる戦略型のFD・SDをめざしていきたいと考えています。」

これから進めていきたい取り組みについてFD・SDオフィスが提言しているのは、主体的に学ぶ学生を育てるために、学生も参加して新たな授業を作っていく仕組みづくり。学生も同じテーブルにつき、一緒になって学びの場をつくっていくという構想です。

「教育において大切なことは、学生の力を信じることだと思います。学生たちは信頼されていると感じれば、やる気が出てきます。そして、授業や活動に対しても積極的になっていきます。また、学生は自らの能力に気づいたとき、大きな満足感を得ることができ、自信を持って学生生活を送ることができます。なかには、自分ができていることや身につけたことをうまく言葉で表現できない学生もいます。学生の中で起こっている変化や成長にどう寄り添うのか、これは、私たち教員が、常に心に留めておかねばならない課題だと思います」。

教職員が同じ思いを持って

教職員が同じ思いを持って

さらに、「F D・S D 活動は、教員のみで実現するものではなく、職員と協働して進めていくもの」と副室長は続けます。「学生にとっても、職員は学生の学びを下支えしてくれる重要な存在です」。
「建学の精神である『和』および3つの全学のポリシーに基づき、教員と職員が力を合わせて、学生の学びを最大化する目標に向かっていかなければなりません。そのためには、学部学科教育の質の向上をサポートするFD・SD活動をさらに推進していく必要があります。『これからは、学修者本位の教育とは何か』を追究し続けていかねばなりません。幸いなことに、兵庫大学には学生思いの教職員がたくさんいます。ともに手を携え、学生が楽しく生き生きと学べる大学を作るための模索を続けていきたいと思います」。

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吉原 惠子
        

吉原 惠子

FD・SDオフィス副室長 生涯福祉学部 社会福祉学科 教授

    
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