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働きがいのある職場を創るために

看護師の離職を防ぎ
働きがいのある職場を創るために

2024.06.14 ビジネス医療・福祉最新号

看護師のストレスは年々上昇し、離職率は10~11%に達しています。この数字は一般企業に比べさほど高くはありませんが、そもそも看護師の数は少ないので、離職率のアップは現場への負担をともないます。看護師のストレスを軽減できればと、こころの健康面から研究を続ける大植崇准教授。その取り組みは高く評価され、多年にわたり文科省の科研費助成事業に選ばれています。

最近の研究の概要をご紹介ください。

最近の研究の概要をご紹介ください。

先行研究によって、看護師が離職に至る背景には、ストレスの増大によるバーンアウトという現象があると指摘されています。そこで、バーンアウトをコントロールできれば離職を減らすことができるのではないかと私は考えました。 以来、看護師のストレスを軽減し、気持ちを楽にする介入が行えるよう、認知行動療法の手法を採り入れたプログラムを開発してきました。認知行動療法は、気分や行動に影響を与える「現実の受け取り方」や「ものの見方」に働きかけ、心のストレスを軽くしていく精神療法です。
現況では、メンタルヘルスへの取り組みを行なっている医療機関は60%です。40%の医療機関は「行なっていない」と回答しており、専門家がいないことが原因と考えています。また、専門家がいてもアクセスしにくいという声もありました。この点を踏まえると、専門家がいなくてもできるような仕組みを作ることが重要です。
私が提唱しているメンター制度では、10年程度の経験をもつ看護師が、教育プログラムにしたがって認知行動療法やグループワークの進め方を学び、メンターとなって新人看護師を支援します。実践した結果、専門家が相談に乗るのと同じ程度のストレス低減効果が認められました。

今後の研究の方向性は。

続く研究では、つらい気持ちを軽減させるだけでなく、より前向きな行動を引き出す「PBS(ポジティブ行動支援)」を実践し、学校現場で既に行われている支援の仕組みを参考にしながら、病院全体でメンタルヘルスの向上に取り組む「hospital wide PBS」の仕組みを構築していきたいと考えています。
悩みを相談できる場があり、グループのメンバーと悩みをシェアできることが、若い看護師のストレス低減につながります。それと同時に、メンターのストレスもグループワークによって低減すると期待されます。

メンター制度の課題について伺います。

メンター制度の課題について伺います。

まずは「メンターになって後輩を支えたい」という看護師を増やしていくことが課題です。経験豊富な看護師にメンターとなっていただき、そこから認知行動療法の知識や技術を多くの方に広めていきたい。現在、近畿地方の5つの医療機関に各20人ほどのメンターがいますが、今後はさらに広まっていくのではと考えています。

海外と協力して研究を進めていく方向ですね?

今後さらに進めたいのは国際研究です。マレーシア、カナダ、アメリカ、オーストラリアなどを始めとした世界にメンター制度を発信し、グローバルメンタリングシステムの構築につなげたいと思います。看護師のストレスは世界共通。現状に一石を投じることができれば望外の喜びです。

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大植 崇

大植 崇

看護学部 看護学科 准教授 専門:成人看護学・国際看護学、ストレスマネジメント、多職種連携

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