2023年は兵庫大学に教育学部が誕生した年であり、大学の母体である睦学園が100 周年を迎えるという大きな節目の年にあたります。兵庫大学がこれからも東播磨地域を代表する高等教育機関として、地域とともに、学生とともにあり続けるためには、どのように舵を取り、どこに向かうべきか。今号の学長座談会では、それぞれ兵庫大学の卒業生と元教員であり、現在は大学教育の現場で学長として陣頭指揮にあたっておられる2人のゲストが、河野学長とともに次代の大学の在り方をめぐって議論しました。

対談写真

教員と学生、教員同士のきずなの深さ

河野兵庫大学とのつながりや、思い出についてご紹介ください。

小原30年ほど前に、兵庫女子短期大学(現:兵庫大学短期大学部)の食物栄養学科で教鞭をとりました。ちょうど4年制の兵庫大学ができたころです。あの頃の教員は兵庫大学、短期大学に関わりなく、これからどんな大学を作っていこうか、よく議論していました。当時もそう思いましたが、名城大学で学長を務める今も、兵庫大学の建学の精神「和」は、よい考え方だとしみじみ思います。

濱田私は、兵庫女子短期大学の保育科第三部の一期生です。高校時代は山口県でバレーボールざんまいでしたが、親元から独立して働きながら学びたいという気持ちが強く、兵庫女子短期大学への進学を決めました。仕事と学び、両立の日々の中で、ホームシックになる友人もいました。そんな人たちを慰めながら勉強したことを覚えています。兵庫女子短期大学は自然に恵まれた素晴らしい環境で、近くの池のあたりを散歩するのが大好きでした。学園祭で家政科のファッションショーのモデルを務めた際に、みんなが歓声を挙げて喜んでくれたのが今でもよい思い出です。

河野短大時代からの伝統でしょうか。兵庫大学には素朴でひたむきで、ダイヤの原石のような学生が多いですね。教職員は、学生のために国家試験合格や就職に向かって、親身になって伴走する方が多い。この冬休みの間、コロナ禍の受験指導をどうするかという問題が浮上した時も、「安全のため、リモートでやりましょうか」と学生たちに問いかけたら、「やはり、仲間や先生と一緒に勉強したいです」と言ってくれました。教室を分散し、感染対策をとりながら指導しました。学生と教員のきずな。それは伝統的に培われてきたものでしょう。

濱田姫路日ノ本短期大学でも、コロナ禍にあって、学内実習を工夫しながら進めました。実習受け入れ先によい返事をいただけないこともありましたが、実施日をずらすなど工夫して受け入れていただきました。

小原最近になって文科省は「多様な経験によって課題解決力を」と提唱するようになりました。名城大学でも、海外の学生とインターネットを通じて交流し、海外に出る前に擬似留学体験を実施するなど、今までにない取り組みを行なっています。

河野多様な経験とともに、新しい学びの手法にも関心が高まっていますね。例えば、様々な場面で課題を見出し解決していく「PBL型学習」が脚光を浴びています。これは新しい学び方ですね。どのようにこれを進化させていくか、兵庫大学でも試行錯誤が続いています。

大学が直面する今日的課題に向けて

地球儀とメガネ

河野 少子化の時代にあって、いちばん大事なのは教育の質を上げることですね。また、日本の社会に優れた人材を新たに送り出すことも大事ですが、そこにとどまらず、今までとは異なる大学の在り方も考えていかねばなりません。例えば、大学は「日本の」「若者の」ためだけにあるのかを問い直してみる。海外からの留学生のために、社会で活躍する人々のために何ができるのか。そこからリスキリング、リカレントといった観点も生まれます。そうなると今度は、改組転換などを通じ、新規のニーズを汲み上げていくという可能性もあります。海外ということでは、私たちが展開している専門教育の中には、栄養や医療・福祉などアジア各国で解決策が求められている分野が多々あります。成長著しい国々では、今後、生活習慣病が急拡大していくことが懸念されていますが、これにどう対処するかは、すでに多くのノウハウを持つ日本の大学、研究機関がサポートできる。教育、ビジネスなどの分野でも同様です。大学は国内市場だけにとらわれず、発想を転換して新しい動きをつくっていくべきだと思います。

小原 リスキリング、リカレント、留学生受け入れ、すべてこれからの時代に重要な課題だと思います。その他の切り口としては、名城大学の場合は「デジタル人材」「グリーン人材」の育成にも取り組んでいます。前者については「データサイエンスAI入門」という科目を学部共通で開講し、自分の学部の学びとデータサイエンスはどうつながるかを伝えています。グリーン人材育成は農学部に対応したテーマです。大学院の研究者レベルで進められてきた医農工連携、医薬連携などの共同研究を、大学レベルで進めていきたいと考えています。

濱田 少子化の時代にあって、今が姫路日ノ本短期大学の存亡をかけた正念場だと思っています。保育コース以外にライフデザインコースを設置し、資格取得にこだわらず、ITやビジネススキルを学びたいという人を広く受け入れています。9月入学に対応し、海外からの留学生受け入れも検討しているところです。

それぞれの大学における地域連携

保育士と子ども

河野名城大学、姫路日ノ本短期大学の地域連携の事例をご紹介いただけますか。

小原名古屋市、刈谷市、岡崎市などさまざまな行政との連携が進んでいますし、企業や日進市との連携では、自動運転システムの実装実験に取り組んでいます。中部地区全体では、農学部のない富山県の氷見市が、農学部との連携をきっかけに全学規模の連携へと拡大したという例もあります。

濱田姫路日ノ本短期大学は姫路市、加西市、朝来市と包括協定を結び、幼児教育のキャリアアップのための講師派遣や、シニア向け講座を実施しています。また世界60カ国のおもちゃを9万点集めている「日本玩具博物館」「香寺民俗資料館」との提携により随時見学授業を行い、大学講師が近隣の園児たちに遊びの機会を提供しています。

河野東播磨地域には大学は兵庫大学しかありません。そこで、近隣3市2町と連携協定を結び、教職員が地域や自治体の活動をサポートし、さまざまな提案、取り組みを行なっています。例えば、地域の幼児、保護者の方々を対象とした「子ども大学」、高齢の方を対象とした「なごみカフェ」、多くの講座を開講する「エクステンション・カレッジ」などです。また、これまでは個別で進められていた協力関係を広く拡大しようという意図で、地域の課題解決に向けてさまざまな人、団体とともに協働する「地域創生人材育成プラットフォーム」を構想中です。さらに、地域の課題解決のプロフェッショナルを育てようと開設した大学院現代ビジネス研究科では、専門家を含めた多くの社会人が学んでおり、ここでの研究成果を学部へと浸透させたいと考えています。

小原兵庫大学は地域に根ざした活動を昔からやっておられます。発信もうまいですね。エクステンション・カレッジは、創設時は大学の教養レベルの授業をめざしていたのですが、最近はリスキリングに力を入れることを検討しており、ビジネスマン対象の授業も増設する予定です。

誰もが夢を追い続けてほしい

小原2019年にノーベル化学賞を受賞された吉野彰さんは、名城大学の教授でもあるので、スウェーデンに行く時に同行したのですが、その際に若い人へのメッセージをお願いしたところ、「実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな、と言うけれど、未熟な穂は天に向かって立っている。若者には天を向いて、とんがっていてほしい。そうすればきっと実る。夢をしっかりもって。失敗してもいいから。まず一つの夢を追いかけて、ダメならまた別の夢を追いかければいい。コロナ禍、経済格差、いろんな問題があるけど、諦めないで、夢の達成に向けて工夫してほしい」と言われました。今は若い人だけでなく、リカレントの方、地域、ビジネスで頑張っている方にも、さらに上向きに進みたい人がおられる。そういう方々に大学を活用していただきたいと思っています。

濱田私はこれからも、学生とともに成長していきたいですね。「継続は力なり」は本当だと今改めて思います。努力は必ず報われます。

河野今の時代、自分に自信のない若い人が多いように思います。私は、人生の後半戦で逆転ホームランを打つ人をたくさん見てきました。だから若い人たちには「十分に伸びしろがあるのだから、あきらめないでほしい。人生100年時代、18、19歳なんて野球で言えばまだ二回も終わっていない。二回であきらめるなんて、あり得ないですよ」と言いたい。自信をもって、上を向いて歩み続けてほしいですね。

小原濱田さんを始め、兵庫大学は地域で活躍している卒業生も多いですね。

河野兵庫大学は6月にかけ、100周年イベントで盛り上げていきます。これからも学生だけでなく、卒業生にも地域の方々にも、親しみやすい大学であり続けたいと思います。

濱田 敏子

姫路日ノ本短期大学 学長
幼児教育科 教授
研究分野:保育法論・こども家庭福祉

濱田 敏子はまだ としこ

小原 章裕

名城大学 学長
農学部 教授
研究分野:食品化学

小原 章裕おはら あきひろ

学園創立100周年という大きな節目に学園理事長という大役を任された河野真兵庫大学学長。少子化、グローバル化など社会環境が大きく動く中で、新しい学園づくりについて語ります。

睦学園グランドデザイン2030

教育イメージ親子

令和4年11月より睦学園の理事長に就任いたしました。そして本年は学園創立100周年という大きな節目を迎え、これまで以上に責任の重さを感じています。100周年を機にこれから学園はどうあるべきか、過去、現在、未来に思いを馳せつつ考えを巡らせる毎日です。
若年人口は、2030年には今より減少しています。高校、中学から、コロナ禍による出生数減の影響をこれから強く受ける幼稚園まで、人口減の波は確実に訪れます。私たちは来るべき日に備え、対応できる体制を整えねばなりません。そのような現実を踏まえ、今回、睦学園グランドデザイン2030を策定しました。スローガンは「和でつながり、個を伸ばす」。学園のベースにある人間力をもとに、先進の教育システムを駆使し、一人一人の個性を重視した教育を展開していこうという思いをこめています。

5つの重要テーマと大学新学部創設

また、2030年に達成すべき学園及び各校園の重要テーマを「人間教育 教育研究 国際化推進 社会連携 経営基盤」の5つの領域にまとめました。これらの達成を2030年に向けて図っていきます。
そのため、学園内の各学校の連携をさらに強化し、例えば附属幼稚園において、大学の専門研究者によるサポートにより先進的な幼児教育の充実を図るなど、今までにない取り組みを積極的に導入していきます。
教育学部の新設につきましては、近隣の他大学に歴史ある教育学部がいくつもあるなか、今、教育学部を創設するのは、いわば最後方に位置することになるという見方もあります。我々はしかし、最後発だからこそ最先端の学部にしたいのです。新学部ではICTを含め、現場で求められる広範な能力、実践力を育み、子供たち一人一人の実情、ニーズに即した「個を見る指導」ができる人材を育てていきます。さらに教育学部での研究成果を学園の中学・高校に取り入れ、学園全体の教育力のアップにつなげる考えです。

睦人材教育メソッド

睦学園の源は、仏教の日曜学校です。100年前、地元の子どもと都会から来た子ども、両方を受け入れてスタートしました。また、当初から女子の職業教育に力を入れました。当時、社会的に厳しい立場に置かれていた人々が強く生きていくことをサポートする学校でした。学園の強み、特徴は、つねに「寄り添う教育」を重視してきたことです。
これまでの歩みを振り返りながらも、学園では、「睦人材教育メソッド」と称し新たな人材育成に関する概念化を進め、具体的なプログラムの実施を検討しています。先進的な手法を通じて応用力、実践力を向上させるとともに、建学の精神の浸透・実践を通じて人間力を高めるという考え方に基づいた教育を行い、高い技能と温かくしなやかなこころをもった、睦学園ならではの人材を育んでいきたいと考えています。
今や、多くの知識や技能は機械に置き換えられる時代になりました。しかし、睦学園はこれからも、機械に置き換えることのできないきめ細やかな教育、指導ができると確信しています。そこに集う人々を優しく包み、愛おしみ、成長する姿をサポートする気持ちは、学園全体に息づいています。

千年古びることのない「和」のこころ

建学の精神である「和」は今盛んに論議されているSDGsの考え方ととても近いと思っています。誰一人取り残さない社会の実現。これは「和」の精神と親和性が高く、今の社会に絶対に大切な考え方です。私は兵庫大学の学生に「あなたたちは各専門分野でSDGsの考えを支える人、牽引する人になる。それは、これからの社会で強く求められる人だという事ですよ」と言っています。睦学園の「和」のこころは、これからも輝きを放ち続けるでしょう。聖徳太子は1000年以上前の人ですが、大切なことに変わりはないと確信しています。

河野 真 理事長

河野 真 理事長

兵庫大学・兵庫大学短期大学部 学長を兼任。
令和4年11月1日より学校法人睦学園 理事長就任

先進的教育スキルと地域との連携で育む現場力

次代の教育を見つめ、現場で輝ける教育・保育者像を長年にわたり追究し続けてきた本学に、2023年春、教育学部教育学科が誕生しました。ねらいは、少子化、教育ニーズの多様化など激しく変わっていく教育環境に対応し、子どもに寄り添い、子どもとともに成長する教育者・保育者を育てること。新しい学部ではどのような学びが展開されるのかを、学部長、学科長が紹介していきます。

「PBL、IEP、ICT」3つの伸ばすべき力

「PBL、IEP、ICT」3つの伸ばすべき力

松田誕生する教育学部の特徴を一言で言えば、現場での実務経験が豊かな実践系の教員と、アカデミックな知識を備えた理論系の教員が、良いバランスで構成されていることだと思います。両者に共通していることは、学ぶ側の立場を重視していること。学校や保育教育においては子ども目線を重視し、大学教育においては学生目線を大切にしています。

本学はつねに地域とともに歩み続ける大学であり、基本となるこの考え方は教育学部においても変わることはありません。一方、他大学の教育学部に比べると本学部は後発です。それゆえに他大学における現場の状況をしっかりと研究し、今何をすべきかを熟考し、学生の指導へと反映させていかねばなりません。以上を踏まえながら、教育学部では、次の3つを軸にした教育を進めていきます。
まず第1に、地域の中で教育課題を学生自身が発見し、課題の解決に取り組むPBL(課題解決)型の実践的な学びを重視します。学生は入学時から段階的にこれを体験していきます。
第2に、子ども一人ひとりのニーズや特性を把握してIEP(個別教育計画)を作成し、それに基づいた教育を実践できる教育者、保育者を育成します。IEPに基づく教育の推進は、欧米で先行してきた先進的な教育理論に基づくもので、子ども一人ひとりに寄り添った指導の実現をめざすものです。同時に、私たち教育学部の教員も、学生一人ひとりの個性をどう伸ばし、どう成長させていくかを深く考え、学生と常に対話しながら教育を進めていきます。
第3に、今や教育現場になくてはならないICT活用スキルの向上を加速させます。この本学はつねに地域とともに歩み続ける大学であり、基本となるこの考え方は教育学点に関しても、学生にスキルの習得を徹底することはもちろんですが、私たち教員も今まで本学において蓄積してきた教育に関するデータ・知識を学生の指導に生かし、柔軟で多様性のある教育を進めていきたいと考えます。

松田本学部は幼稚園教諭、小学校教諭、特別支援学校教諭、保育士をめざす人々がともに学ぶ場となります。めざすのは、幼児教育のその先、学校教育のその前を分断なく考えることができる、想像力豊かな先生の育成です。私たちは幼児教育・学校教育が連携しあってこどもの発達をサポートすべきであるという「成長リレー教育」の理論を軸に、PBL、IEP、ICTの能力向上に力を注ぎながら、新しい教育学部の学びを展開していきます。

PBL:Project-Based Learning(課題解決型学習)。理論と実践を繰り返しながら地域社会の中で成長をめざす。
IEP:Individualized Education Plan(個別教育計画)。子どもの志向や発達に合わせ、実践を学ぶ。
ICT:Information and Communication Technology。テクノロジーの活用で学習計画の最適化や校務を効率化するスキルを身につける。

地域の課題に学生が一緒に取り組む

地域の課題に学生が一緒に取り組む

地域の方々からは、子育て支援への期待が大きいと感じますね。これまでも、こども福祉学科において「こども大学」という取り組みを行い、地域の親子さんを招き、さまざまな交流をしてきました。このような触れ合いはますます拡大していくと思います。
また教育学部では、今春開設されたばかりの東加古川駅前サテライトキャンパス(HUES)も利用して授業が行われています。全面ガラス張りという未来的な空間で、新しいことが始まるという期待感をもって学ぶためのいい刺激になっているのかなと思います。HUESはエクステンション・カレッジの講座が実施される場でもあるので、今までにない地域とのつながり方が考えられるのでは。積極的に活用していきたいですね。

松田1年生の実習は、小学校や幼稚園などで秋からスタートします。学生たちはそこでさまざまな課題に出会うでしょう。その課題を大学に持ち帰り、しっかりと深め、課題解決に向けて理論からアプローチを行う。そして次に実習に行った時には、前の実習で出会った課題に対して、大学でまとめた解決策が現場でうまく機能するのかを確かめます。そういった活動を卒業まで続け、学生は実践的な課題解決力を身につけていきます。 一方、小学校や中学校の現場からは、今後、少子化がますます進むと考えられている状況下で、新たに起こってくるさまざまな問題にどう対応していくか、ノウハウが欲しいという声も聞かれます。私たちは教育学部のPBL活動が、学生が教育の現場の方々と一緒に課題解決の糸口を考えるよい機会になればと願っています。

学生を見守り、主体性を引き出す

学生を見守り、主体性を引き出す

松田本学のこども福祉学科の学生は、医療保育に興味を持つ方が以前から多かったのですが、さらに教育学部では特別支援学校教諭の免許も取得できるという点に関心が集まっているようです。福祉や教育に興味がある人は、優しさを持った人が多いと感じます。この人たちの優しさ、心の細やかさを丁寧にサポートしてあげなくてはいけません。

学生の話を聞いてあげることが大切です。私はどんな時も、時間が許す限り立ち止まって聞いてあげるよう心がけています。本学部の先生は、学生の味方になりたいと思っている方ばかりです。

松田制度上でも学生の学習をサポートするために、チューター制を導入し、教員ひとりが3から4人の学生の指導にあたっています。チューターは学生と面談を繰り返し、「将来どんな道に進みたいか」、「今、何をすべきか」などじっくり話し合います。目的意識が高い学生が多いので、今後どう成長していくのかがとても楽しみです。

教育学部は、新入生も教員もいわば一年生。一緒にこの学部を作っていこうという、ともに成長していこうという気概、伝統を作るのは自分たち自身だという気概にあふれています。

松田新入生からは「新しいサークルを立ち上げたい」「小学校教育についてもっと学べる講座を開いてほしい」などの声をすでに聞いており、これからも、さまざまな意見が出てくるのではと楽しみです。我々教員が先回りして準備しすぎてはいけないので、彼らがみずから動き出すのを期待しています。

学生へのメッセージ

卒業後は、子ども一人ひとりに対応できる先生になってほしい。「兵庫大学出身の先生は子どものためによく動いてくれる」という地域の方々の声が聞けたらうれしいですね。

松田自分の希望する資格や免許の取得はとても重要ですが、学生時代にはいろいろ経験してほしいですね。一つを深くというのもいいですね。心に残る体験をしてほしい。

關 浩和 教授

關 浩和 教授

教育学部 学部長
専門:社会認識教育学(社会科・生活科)、教育課程論

松田 信樹 教授

松田 信樹 教授

教育学部 学科長
専門:発達心理学

東播磨地域六条麦シュンライの健康増進効果の評価研究

六条大麦は、東播磨の特産品のひとつで、東播地域は、年間1千トンの麦茶用大麦を出荷する西日本有数の産地(注)です。しかし近年、麦茶の需要が大幅に減少してききたため、産地では大麦を使った新しい食品開発など、これまでにない用途の開拓に向けた取り組みが進められています。

(注)兵庫県HPより

研究を通じて新たな地域貢献を

研究を通じて新たな地域貢献を

今から3年前、内田亨教授に対して、JA兵庫南から「特産品の六条大麦シュンライをもっと活用したい。研究室との共同で研究を行いたい」という申し入れがありました。この提案を受け入れ、共同研究に乗り出した理由について、教授は次のように語っています。「研究室では、地域の方々と交流を図るため、以前から地元の人々を対象に健康教室を開催していました。しかし2020年以降コロナ禍が広がり、教室開催が難しくなっていったのです。そこで新たな地域貢献の形として、この共同研究を進めていきたいと考えました。JAさんと共同で行う臨床研究の結果を通して大麦の健康効果が広く浸透すれば、大麦の消費が増え、生産が拡大し、ひいては農家の方々にとってもプラスになります。さらに、共同研究に学生も参加すれば、コロナのために学外の方々と繋がる機会を失っていた彼らにとっても、状況を変えるチャンスとなるかもしれないと思いました」。

大麦の健康効果を公募実験で検証

大麦の健康効果を公募実験で検証

翌年の2021年から、六条大麦の健康効果を測定する臨床研究が、授業の一環としてスタートしました。大麦には血糖値やコレステロール値の低減などの健康効果があるとされていますが、この効果を客観的に示すことが研究の目的です。初年度(2021~2022年)には基礎研究として、JAが加工製造した六条大麦粉が含まれたパンを学生と教職員が被験者となって1日1回8週間、継続的に摂取しました。測定の開始時・終了時には唾液検査を行なって免疫力向上などの効果を調査するとともに、内臓脂肪・体脂肪などの体成分も測定しました。

「この年の結果から、いくつか評価できる項目がありそうだと分かったので、2022年の夏からは母集団を大きくして研究を続けようということになりました」(内田教授)。

2年目の臨床研究では被験者を公募で募りました。集まったのは100人に上る、さまざまな年代の地元の人々です。この人たちに前年度と同様、8週間大麦粉入りパンを食べ続けてもらい、データ収集を行いました。研究にあたって、被験者とコミュニケーションをとったのは栄養マネジメント学科の学生たちです。一般の人には見慣れない測定装置の使い方をわかりやすく説明し、測定のスタート時と終了時に検査項目のデータを採取、さらに自分たちも被験者となって大麦粉入りのパンを食べ、美味しく食べられるレシピの開発にチャレンジしました。

データ測定を通じて地域の方々と交流

研究に参加した学生たちに話を聞くと、「大麦のパンを毎日食べながら、どうすれば健康にプラスになって美味しくなるかなと、サバ缶など、いろいろなものをプラスして研究しました。発表に参加できたのもいい経験でした(田中柚衣さん)」。「自分で食べてみると、大麦のパンはパサパサしがちで食べにくいとわかりました。そこで、どうすれば美味しく食べられるか工夫しました。レタスやスクランブルエッグを乗せたサンドイッチがおすすめです(篠原愛佳さん)」。「私はクリームチーズが合うかもしれないと思いました。むずかしかったのは、体成分分析装置の使い方を被験者の皆さんに説明すること。指示通りに使わないと正確なデータがとれないので大変でした(小西真未さん)」。「内臓脂肪など体成分を測る検査では、測定するだけでなく、地域の方々と交流し、いろいろお話しさせていただいたのが貴重な経験でした。やはり意思疎通が大切だと感じました(後田あゆみさん)」。

大麦は血管年齢の老化を防ぐ可能性あり

大麦は血管年齢の老化を防ぐ可能性あり

ここまでの研究について内田教授は「1年目には便通促進効果を実感した方が多くおられたほか、免疫力向上が見込めそうだとの結果が出ました。2年目となる今年の研究では、便通促進効果とともに、血管年齢の向上効果に有意な差が出ました」。血管年齢は、血管の老化の具合を表していて、血管の老化が進むと、血流が流れにくくなってさまざまな疾病を引き起こすリスクが高くなります。今後、大麦の継続的な摂取によって血管の老化にブレーキをかけられることが明らかになれば、大きな成果を上げたといえるでしょう。

今後の課題については、「8週間という研究期間は、まだまだ短いと感じています。もっと長期にわたって大麦の健康効果について調査していきたい。そのためには、長く食べ続けてもらえるよう、味や食感の改善、レシピの提案など、さらなる工夫も大事だと感じています」(内田教授)。

学生は最終プレゼンテーションにも参加

学生は最終プレゼンテーションにも参加

 臨床の現場で奮闘した学生たちは、客観的な効果を測定するとともに、被験者の感想や意見も収集、さらに、大麦の健康効果についてもっと理解してもらいたいと、手作りのリーフレットを作成しました。測定にやってきた人々に配布すると「興味をもって読みました」「しっかり説明してくれて嬉しかった」と反響があったそうです。内田教授も「学生たちは被験者の方と親しく交流して、上手にデータを収集してくれました。8週間研究を続けた結果、ずいぶん頼もしくなってきましたね。地域の人々とのコミュニケーション力が向上していったのがよく分かりました。

3月に実施した研究発表では、被験者の皆さんと大学関係者、報道関係者を前にして、研究の成果を堂々とプレゼンテーションするほどに成長しました」と高く評価しています。また、今回の研究が刺激となって「食と栄養について、さらに究めたいと思うようになりました」という田中さんは、大学院への進学も考えていると熱い思いを語ってくれました。

測定に参加した地元の人たちからは「貴重な経験ができた」「以前よりも健康を意識するようになった」「大麦を地元特産品として見直すようになった」など、さまざまな感想が聞かれました。そのなかには、検査から研究発表まで一生懸命に取り組んでいた学生たちへの労いの言葉もあったそうです。このようなところからも、地域の人々と学生との距離が近づいたことが感じられます。専門分野を通じて地域との交流を深めていけたことが、学生にとって大きな収穫となりました。

学生は最終プレゼンテーションにも参加

内田 亨

内田 亨

健康科学部栄養マネジメント学科 教授
実践食育研究センター長 専門:糖尿病

後田 あゆみ

後田 あゆみ

健康科学部栄養マネジメント学科3年生
(兵庫・兵庫大学附属須磨ノ浦高等学校出身)

篠原 愛佳

篠原 愛佳

健康科学部栄養マネジメント学科3年生
(兵庫・兵庫大学附属須磨ノ浦高等学校出身)

小西 真未

小西 真未

健康科学部栄養マネジメント学科3年生
(兵庫・兵庫大学附属須磨ノ浦高等学校出身)

田中 柚衣

田中 柚衣

健康科学部栄養マネジメント学科3年生

加西市では、地域住民に健康習慣を身につけてもらうための動機づけにしようと、健康ポイント事業を平成28年度から継続しています。この事業で収集した多様なデータから健康増進効果を解析してほしいという依頼を受けたのが、本学の朽木勤教授。学内の異なる分野の2人の教員と共同研究を行って、健康ポイントの付与が住民の健康増進につながっているのかを検証しました。

加西市の運動ポイント事業とは?

写真

この事業は、住民が「歩く、スポーツ活動に加わる」など、健康の維持・増進につながる活動に参加した場合、ポイントが付与され、そのポイントが地域の商業施設などで利用可能なものになるというものです。運動ポイント事業は全国で盛んに行われ、加西市でも参加者の長期にわたる体力測定、健康診断などのデータが多く蓄積されています。

レポート画像

事業の効果検証を依頼されたきっかけ

実は、この事業の担当者は本学の卒業生で、加西市において、健康運動指導士として活躍しています。私はその方から「ポイント付与の健康増進効果について、専門的な立場で解析して、事業の結果を取りまとめてほしい」との依頼を受けました。そこで、さまざまな視点からデータを解析するために、私以外に2人の本学の先生に参加していただき、ポイント事業の分析を進めることになりました。

研究の進め方と結果について

共同研究にあたり、3人共通の目標は「果たしてポイント事業は健康づくりに役立っているか」を調べることでした。公衆衛生学が専門の多田章夫先生には生活習慣病と運動の関連性について、また発育発達学が専門の米野吉則先生には、ポイント付与が健康増進活動に与える効果について分析していただきました。一方、私は地域性という視点から健康増進事業の効果を検証。同じインセンティブに対して、どの地区の人々が積極的に取り組むのか、その要因は何かなどを追究しました。

分析の結果からは、ポイント事業が市民の運動意欲を促進させ、効果的な運動習慣を創出したこと、1日10,000歩を月に20日は月に300ポイントに相当し、年に3,500ポイントで、健康効果がみられることが示されました。同時に、地域による参加者数の違い、測定された歩数の違い、体重減少割合の違いなどが明らかになりました。

今後の挑戦について

医療画像

現在は、令和元年から3年度までのデータを解析し終えたところです。スマホを活用した新しい方法に切り替わって参加者も2倍以上になりました。これからも継続的に解析をしていく予定です。ポイントは、地域通貨として利用できます。今後は、その使い道をさらに広げて、地域の環境保全やこどもたちへの支援など「あなたが健康になれば町もよくなる」という仕組みはできないかと、加西市の担当の皆さんと話し合いながら考えています。また、令和4年度、加西市で新しいスポーツ事業が実施されました。主な対象は、ポイント事業でフォローできなかった子育て世代の女性たち。アスリートの協力を得てトレーニング動画を作成し、それを見ながら運動してもらって、私たちは監修という立場で効果を検証しています。その結果、行動変容ステージがアップしたことが示されました。どんな仕組みであれば人々が自然に身体を動かすようになるのか、そのために必要な仕掛け作りにこれからも挑戦していきたいです。

朽木 勤

朽木 勤

健康科学部 健康システム学科 教授 専門:健康体力科学、運動処方

小さい頃から音楽が好きで、大学は教育学部に進みバイオリンを専攻した崎元りずみ講師。演奏家としての顔も持ちながら、教員採用試験を受けて中学校教員となり、その後、小学校の音楽専科の先生として活動しました。縁あって兵庫大学短期大学部の教壇に立つこととなった崎元講師に、将来保育や教育の現場に立つ学生たちに学んでほしいことや、舞台に立つすばらしさなどを聞きました。

学生たちに一番、伝えたいことは

普段から強調しているのは「音楽教育は技術指導ではない」ということ。音楽の授業というと、すぐに楽器や歌が得意・不得意という考え方になりがちですが、子どもは本来、そんな考え方で音楽と接しません。もっと自由に楽しんでいます。

確かに音楽の先生は、鍵盤ハーモニカや太鼓、カスタネットなどの楽器や、歌の指導を行います。しかしその時に大切なのはテクニックではなく、人間教育の視点です。自分をより豊かに表現する喜びや、聴いた音楽からさまざまなイメージを広げる楽しさを子どもたちに教えることが重要なのです。

演奏を指導する時、私は「上手にできたね」ではなく、「素敵な音楽だね」と言葉をかけます。演奏のいちばんの楽しさは、思いを共有すること。ともに音楽を奏でる仲間、聴いてくださる方々と一緒になって、素敵な気分になることです。音楽って素敵だなという思いを伝えられる先生、いつまでも覚えているようないい思い出を作ってあげられる先生が保育、教育の現場に増えてほしいと願っています。

力を入れているアンサンブルの指導

バイオリン画像

授業の中で、器楽のアンサンブルを指導します。アンサンブルは言葉小さい頃から音楽が好きで、大学は教育学部に進みバイオリンを専攻した崎元りずみ講師。演奏家としての顔も持ちながら、教員採用試験を受けて中学校教員となり、その後、小学校の音楽専科の先生として活動しました。縁あって兵庫大学短期大学部の教壇に立つこととなった崎元講師に、将来保育や教育の現場に立つ学生たちに学んでほしいことや、舞台に立つすばらしさなどを聞きました。のないコミュニケーション。太鼓やカスタネットなど、音程の変化を出せない打楽器でも楽しいアンサンブルはできます。音の高さ、音色の違いなど、楽器一つ一つに個性があるから、自由な発想があればいろいろなことができるのです。まず、先生となる学生が自由に楽器で楽しんでほしい。現場では先生の発想の豊かさが、音楽の授業を楽しくするのです。

崎元講師の楽器コレクションより。カスタネットのような、よく知られた楽器から民族楽器まで多種多様。

演奏家としての思い

今もバイオリン演奏者として舞台に立つことがあります。今年の4月にはオーケストラの仲間とベートーヴェンの「第九」を披露しました。第九といえば、普通は年末に演奏される曲目なのですが、コロナ禍でなかなか音楽会が開催できなかった毎日が続き、ようやくコンサートができるようになった時、何を演奏したいかと仲間と相談した結果、第九がいいと意見がまとまりました。当日はあらためてベートーヴェンの深さに触れることができました。演奏会は準備も本番もなかなか大変ですが、仲間や聴いてくださる方と音楽を共有する楽しさからは、やはり離れたくありません。これからも続けていきたいですね。

バイオリン写真

これからやりたいこと

音楽の楽しさ、素晴らしさを伝え続けること。そして、人々の普段の生活の中にもっと音楽が溢れていくようにお手伝いをすることです。自分自身、いろんなスタイルの演奏活動を続けていきたいし、学生にも学外での発表の場をたくさん作ってあげたい。兵庫大学短期大学部の所属する睦学園のネットワークを活かして、附属幼稚園などとの交流も増やしたいと考えています。

崎元 りずみ

崎元 りずみ

短期大学部保育科 講師 専門:音楽(バイオリン)

2022年12月3日、学生2名と兵庫大・桜谷福祉会から職員4名、合計6名が日本を出発し、ドイツ研修の旅に出かけました。9日にドイツを出立するまでの3日間の活動期間中に、一行はケルン老年医学センターや児童養護施設などを見学。また連携協定大学であるカトリック大学NRWの歓迎会にも参加しました。参加した学生2人を交え、渡航の感想や研修で得たもの、今後に向けての思いなどを聞きました。

海外派遣の必要性

研究を通じて新たな地域貢献を

田端 本学はドイツにあるカトリック大学NRWと連携協定を結んでおり、ドイツからは毎年学生が来学しています。しかし本学から学生がドイツに行く機会は今までほとんどなかったので、私たちは学生の海外派遣を進める必要性を強く感じていました。

絹田 桜谷福祉会は兵庫大学と提携を結び、連携授業を実施しています。また、奨学金制度を通じて学生を支援し、定期的に大学と話し合いを続けるなど、ともに学ぶという姿勢を重視しています。今回ドイツ研修についてのお話を伺い、見聞を広げる良い機会と思ったので、職員を派遣することにしました。

田端 今回研修に参加した学生、髙木さん・高田さんは桜谷福祉会の奨学生であり、この研修が実現できたのも連携の賜物と感謝しています。

研修前にどんな準備をしましたか?

高田 ドイツ語の日常会話を学びました。また髙木さんとともに、今回行く街と見学する施設について、さらに福祉に関する日本とドイツの事情について学習しました。

髙木 訪問する施設などへのお土産も2人で作りました。用意したのは、折り紙で飾ったうちわ、毛筆で書いた日本語の色紙などです。

実際にドイツに行って体験したこと

実際にドイツに行って体験したこと

高田 ドイツ人って温かい人々だなというのが最初の印象です。ちょうどクリスマスシーズンだったので、街の賑わいの中で人々の温かみ、優しさを直に感じることができました。

髙木 病院付属のお年寄りのための施設で「光療法」を見学しました。認知症の人は影があると不安を感じるので、光量を調節して1日の流れを感じやすくしたり、季節の流れを感じる映像を活用したりするなど、開放的な雰囲気の中で光を活用した療法に取り組んでいました。

実際にドイツに行って体験したこと

高田 児童養護施設では、挑戦する気持ちを大切にしていることがわかりました。過去の経験から人間不信になっている子どもには、馬やラクダ、ラバなど、動物との触れ合いを通じた癒やしを重視していました。一人ひとりの子どもにとって何が大事かを考え、支援する体制を整えているなと思いました。

兼本 また、施設の中に学校があり、プールやサッカー場もあって、いくつもチームを作ってゲームをしていました。いろいろな子が一つの施設で育っていて、どんな子も育っていけるように、一人一人の達成感を大事にしているという印象をもちました。

実際にドイツに行って体験したこと

高田 研修前は、コロナ禍でいろいろな制限がかかっていたので「私は何のために福祉の勉強をしているのだろう?」と学びへの意欲が少し下がっていました。しかし今回のドイツでの体験は、自分の進みたい道を見つめ直すきっかけになったと思います。改めて福祉の勉強をしたくなりました。

髙木 施設のスタッフや協定大学の先生方のお話を聞いて、自分の知識の未熟さ、視野の狭さに気づきました。また、人権ということを考え直すきっかけにもなりました。自分が担当している子どもを見守るだけでは不十分で、ご家族やその子の友達など、広い視野をもって多くの人々のことを見なければいけないのですね。もっと勉強しなくてはと思いました。

兼本 2人の学生さんから本気で社会福祉を学びたいという意欲を感じ、刺激を受けました。社会人の先輩として「もっと成長したい、自分の力を発揮したい」と思う若い人々をしっかりサポートせねばと気持ちを新たにしました。

施設の方へのお土産を渡しました

今後に向けて

今後に向けて

田端 国際経験は自分を変えるきっかけになることが多いのですが、素晴らしいことです。学生の海外経験を増やす仕組みづくりをもっと整えねばと痛感します。中長期の派遣をもっと多くし、中身ももっと充実させていきたいです。

絹田 3月に研修参加者の報告会を実施しました。2人から話を聞いて、一人一人を大切にするという考え方の重要性を私も改めて痛感しました。そのために何が必要か、そのベースになる精神は何だろうと考えるに、それは結局、相手を信じる気持ちではないでしょうか。このことは、働く仲間の間でも同じことです。私は福祉の世界で働く先輩として、皆さんを信じ、支えていきたいと思います。

兼本 貴美

兼本 貴美

社会福祉法人桜谷福祉会
尼崎さくら保育園 園長

絹田 美由紀

絹田 美由紀

社会福祉法人桜谷福祉会
保育部門 統括園長

高田 涼

高田 涼

社会福祉学科3年生
(兵庫県立日高等学校出身)

髙木 一加

髙木 一加

社会福祉学科3年生
(島根・出雲西高等学校出身)

田端 和彦

田端 和彦

兵庫大学副学長(研究、社会連携担当)教授
専門:地域政策

さまざまな場面で国際化が進むなか、今後は全学を挙げて留学生サポートや本学学生の海外留学、国際交流に関わる業務を進めていかねばならないという機運が高まっています。その中で昨年10月、留学・国際交流の窓口として留学・国際交流センターがスタートしました。同センターの幅広い取り組みや今後の目標について、榎木浩センター長と栗涛主査に話を聞きました。

外国人留学生のチームが地域で農業・ビジネス体験

外国人留学生のチームが地域で農業・ビジネス体験

兵庫大学の近郊は自然が豊かで農業が盛んな地域。この特性を生かし、地域の方々とともに留学生の実践的な学びを進めようと、センターでは現代ビジネス学科の留学生とともに、稲美町の耕地をお借りしてサツマイモなどの栽培をスタートしました。センターの栗主査は、「この取り組みは野菜作りと販売を通じて、実践的な経営を学ぶ活動です。我々は農業のアマチュアですが、地元の人たちにサポートしてもらって立派な野菜づくりが実現できました」と語ります。

さまざまな形で留学生を支援

さまざまな形で留学生を支援

地域の方や教職員が、使わなくなった家具などを留学生に修理して提供する「物々交換」や、土山地区の県営住宅を借り上げ、留学生のシェアハウスに活用するなど、海外からやってきた学生たちの生活を柔軟な方法で支援する取り組みが進んでいます。また、留学生が日本の交通法規を理解して安全に暮らせるよう、この春、加古川警察署の協力を得て交通講習会を実施しました。「留学生に対しては、生活支援だけでなく、日本語授業の充実にも力を入れています」と榎木センター長。「4月から日本語教員の配属がスタートし、留学生たちは日本語能力試験を目標に勉強しています」。加古川市が毎年実施している「外国人による国際スピーチ大会」にも、本学は参加しています。さらに今後は、進路支援にも力を入れていこうと考えています。

兵庫大生の国際交流・留学について

兵庫大生の国際交流・留学について

日本人学生の留学サポートに関しても、留学・国際交流センターが窓口業務を引き継ぎました。榎木センター長は「現代ビジネス学科は、これまでも正規の授業の中で短期留学を実施してきました。また他学部も、コロナ禍にあってもオンラインを含め、多くの海外の大学と連携・交流してきています。今後も海外の大学との新しい繋がりを築くとともに、より留学しやすい仕組みを作っていきたい」と抱負を述べました。

ともに学び、成長できる環境を整えていきたい

センターの開設に伴い、留学をめぐる動きは一気に活発化しています。夏にはサマーキャンププログラムへの留学生の受け入れを実施。また、秋入学の留学生受け入れに向けて提携大学と協議を重ね、海外インターンシップについても実施をめざしています。

「海外からの留学生も日本人学生も、みんな兵庫大学の学生」と語る榎木センター長。留学・国際交流センターは今、すべての兵庫大学生が地域の中で一緒に学び、成長できる環境を整えようとしています。

榎木 浩

榎木 浩

留学・国際交流センター センター長
現代ビジネス学部 現代ビジネス学科 学科長 教授
専門:情報工学(情報システム、ソフトウエア工学)

栗 涛

栗 涛

留学・国際交流センター
主査

第1回健幸教室ひょうだい

地域の人々が自らの健康について高い関心を持ち、より長い間健康でいられるようにと、看護学科の学生たちが健康チェックやゲーム、ダンスによる介護予防などを行う「健幸教室ひょうだい」が4月15日に開催されました。企画から運営まですべて学生による手作りイベントは、盛況のうちに終幕。地域の人々との触れ合いを通じて、日頃の学びを実践に生かすよい機会となりました。

健康課題について考えるチャンス

健康課題について考えるチャンス

「健幸教室ひょうだい」のスタッフを務めた看護学科4年生の江角優花さんは、参加者の皆さんと交流することは、とても楽しかったと話します。「さまざまな経験を持つ方々との交流は、とても興味深い経験でした。さらに、じっくりお話しすることで地域の健康課題の実態が少しずつ見えてきました。このイベントは、解決すべきさまざまな課題に対して、どうアプローチすべきかを考えるよいチャンスでした。今振り返っても本当に勉強になったと感じています」。

全員が楽しめるイベントにしよう

全員が楽しめるイベントにしよう

開催当日は開場時間より早くから続々と地域の方々が訪れ、第1部の長尾光城看護学研究科長の講演に続き、第2部では看護学生による体温・血圧測定などの健康チェックや健康相談、宝探しゲーム、レッツダンスなど楽しみながら体を動かす催し物が実施されました。「印象に残ったのは、参加者の皆さんの顔がとても生き生きとしていたことです。気持ちよく体操をしながら、学生と交流することは楽しいと少しでも感じてもらえたのなら、とても嬉しいです。私自身も充実した時間を過ごすことができました」(江角さん)
スタッフたちは、この日に向けて入念に準備を行いました。「地域の人々に自分の健康に関心を持ってもらえるよう、プログラムを組んでいきました。大変だったのは、宝探しゲームで使うミニクイズや、ダンスで使う曲を決めること。参加者全員が取り組めるように、立っても座ってもできて、理解しやすいものを作らねばならなかったからです。スタッフ同士の中で役割を分担しつつ、全体でを確認しあったり、困ったことがあれば共有し、補いあったりして進めていきました」(江角さん)

想像力を働かせることの大切さ

想像力を働かせることの大切さ

「健幸教室ひょうだい」を支えるメンバーになって得たこと、今後に生かしていきたいことを江角さんに聞くと、「今回、さまざまな場面で『これは安全に実施できるだろうか?全員が参加できるだろうか?』などと、当日起きるかもしれないことを想像しました。想像力が本当に大切だということを学んだと思います」という答えが返ってきました。さらに、「未来のことを想像することも大事ですが、さまざまな場面において、実際に起きてしまったことについて原因はなんだったのだろうかと、過去にって想像することも大事なのではないか」と考えるようになりました。今回の経験は、将来は養護教諭として子どもたちの学校生活を健康面から支えたいという江角さんにとって、貴重な気づきの機会となったことでしょう。

江角 優花

江角 優花

看護学部 看護学科4年生(島根県立大社高等学校出身)

女子サッカーASハリマアルビオン所属

栄養マネジメント学科3年生の谷島 利実さんは、日本女子サッカーなでしこリーグ1部で活躍する女子サッカー選手。播磨地域をホームタウンとするASハリマアルビオンに所属し、勉強との両立を図りながらサッカーに打ち込んでいます。幼い頃からのサッカー選手になるという夢を叶え、さらに成長しようと日々取り組む谷島さんです。

幼稚園から始めたサッカーに夢中

幼稚園から始めたサッカーに夢中01

サッカーとの出会いは、幼稚園の年長組に入った頃。「兄の持っていた、防具のすね当てがカッコよく見えて『つけてみたい』と思ったのがきっかけです」と谷島さん。小学校3年生までは男女混成チーム、4年生からは女子チームに加入しました。経験を積めば積むほどサッカーが好きになり、もっと続けたい、もっと上手くなりたいと思いながら今日に至っています。
現在所属しているサッカークラブはASハリマアルビオンです。「レベルの高いASハリマアルビオンでサッカーをしたいとずっと思っていて、高校時代に練習に参加したことがきっかけです」。

幼稚園から始めたサッカーに夢中02

基本のポジションはサイドハーフ。「その時のチームの状況や試合に応じていろいろなポジションをやっています。ディフェンスを任されることもあります」。 選手としての強みを聞くと「ケガが少ないことと、キックの精度が高いこと」。この強みをさらに伸ばして、「数少ないチャンスでも確実にものにできるよう、どんなときもプレッシャーに負けず、冷静にキックができるような選手になる」ことを目指しています。「また、自分の技を磨くだけでなく、サッカーに関する全てに対する理解力を上げていくことが大事だと感じています」。

地域の子どもたちと触れ合う

地域の子どもたちと触れ合う

地域に愛されるチームを目指して、ASハリマアルビオンは地元イベントに積極的に参加します。谷島さんもその一員として、小学生サッカースクールのインストラクターを担当。簡単なプレーを通じてボールに触る面白さを伝えています。「小学生時代、女子サッカーの選手を見て、大きくなったら自分も選手になりたいと憧れました」。スクールに参加する子どもたちと、自分自身のかつての姿が重なるそうです。「私も、子どもたちに憧れてもらえるプレーヤーになりたい。本心からそう思います」。

大学での学びをサッカーにも活かす

大学での学びをサッカーにも活かす

 兵庫大学に進学した理由は、クラブチームでサッカーを続けながら大学で学び、経験や知識を増やすことで将来進む道の選択肢を広げたいと思ったからでした。現在、栄養マネジメント学科の3年生。「大学で学ぶことで、自分の体格ならどんな栄養素がどれだけ必要か、いつ摂取すべきかなどがよく分かります」。栄養についての知識はサッカー生活においてもプラスになっています。目標はスポーツと栄養学について知識を深め、栄養士免許と管理栄養士受験資格を取得すること。「大学で得た知識をサッカーに生かして、今よりももっと活躍したいですね。そして、いつかはスポーツ選手を支える仕事をしたいです」。ふだんは朝から夕刻まで大学で授業を受け、夕方からクラブの練習、下宿に戻ってからは勉強に集中します。学科の先生や友人たちもそんな谷島さんを熱心に応援しています。「試合を見に来てくれ、キャンパスですれ違った時など『頑張ってね』と声をかけてくれます。うれしいですね」。
幼稚園時代から数えると、サッカーキャリアは既に16年。その間にサッカーを通じて多くの出会いや発見を経験しました。「これからも自分の未来を信じて、経験を重ね、成長し続けたいですね」と語る谷島さんが大切にしている言葉は「笑顔」。最後まで輝くような笑顔で応えてくれました。

谷島  実利

谷島 実利

健康科学部栄養マネジメント学科3年生(山梨・日本航空高等学校出身)